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「まぁいいわ。友達だしね。アタシだって女の子が苦しむのはイヤよ」
「ほんと? ありがとう!」
「ターゲットの情報は抑えてるんでしょうね?」
「今日の夜までに揃える。だから今夜、取り掛かってくれ」
「ゲーッ。寝れないじゃん」
「一分一秒を争う事態なんだよ」
中山に今後の青写真を共有しておいた。作戦会議を終えるともう朝だった。ゲイバーの夜は長い。そろそろ帰ると告げると中山が首に絡みついてきた。
「お願い聞いてあげるんだから、チューくらいするのが筋ってもんでしょお?」
「ちょ、おい……」
「してくれるなら心強いオマケつけたげるからぁ」
「なんだよオマケって」
「あ、と、で」
唇を突き出して迫ってくる。猛烈に、猛烈にいやだ。しかし何やら武器をくれるらしいし、ここでパートナーのご機嫌を損ねるわけにはいかない。
「え、ここで……?」
「オンナゴコロ分かってないわねアンタ! 他の子に羨ましがられたいのよぉ!」
自分よりガタイのいい男に迫られる恐怖。いや、こいつは女じゃない。だからこれは決して浮気じゃない。サヤを助けるためだ。
ふたりで幸せになるためだ。
女じゃない、女じゃない、女じゃない。
――俺は腹をくくった。
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