4.アヤとキヨシ

40/55
前へ
/449ページ
次へ
「まぁいいわ。友達だしね。アタシだって女の子が苦しむのはイヤよ」 「ほんと? ありがとう!」 「ターゲットの情報は抑えてるんでしょうね?」 「今日の夜までに揃える。だから今夜、取り掛かってくれ」 「ゲーッ。寝れないじゃん」 「一分一秒を争う事態なんだよ」 中山に今後の青写真を共有しておいた。作戦会議を終えるともう朝だった。ゲイバーの夜は長い。そろそろ帰ると告げると中山が首に絡みついてきた。 「お願い聞いてあげるんだから、チューくらいするのが筋ってもんでしょお?」 「ちょ、おい……」 「してくれるなら心強いオマケつけたげるからぁ」 「なんだよオマケって」 「あ、と、で」 唇を突き出して迫ってくる。猛烈に、猛烈にいやだ。しかし何やら武器をくれるらしいし、ここでパートナーのご機嫌を損ねるわけにはいかない。 「え、ここで……?」 「オンナゴコロ分かってないわねアンタ! 他の子に羨ましがられたいのよぉ!」 自分よりガタイのいい男に迫られる恐怖。いや、こいつは女じゃない。だからこれは決して浮気じゃない。サヤを助けるためだ。 ふたりで幸せになるためだ。 女じゃない、女じゃない、女じゃない。 ――俺は腹をくくった。
/449ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44090人が本棚に入れています
本棚に追加