4.アヤとキヨシ

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サヤはそれからふさぎがちで元気がなかった。 取引先の人間を犯罪者にしてしまったという意識があるようだ。それは真中が悪いのであって別にサヤが悪いわけではない。 2週間ほど様子を見ていたがいまいち浮上してこないので無理やり太陽の下に連れ出すことにした。 「さーちゃん。明日、沖縄行こ!」 「明日?」 「そ、明日明後日で。ダイビングしよう。つかもう飛行機取ったから。はい、準備して!」 旅行用のキャリーとダイビングセットを持って成田から石垣直行便に乗った。 石垣島は俺たちの出会いの場所だ。 「サヤはここで小銭ぶちまけてたよね」 「リョウって気づいてなくてゴメンね」 「ほんとそれ! 泣く!」 「コンタクトとイヤホンのせいなんだよっ!」 空港の自動販売機。同じ場所に再び立ってみる。約1年前、ここでサヤに出会って恋に落ちた。こんなにも多くの人が行きかっている中で、よくもまぁ出会えたと思う。 「あっついね。7月も暑かったけど8月はすごいね」 「マジで焦げるね」 8月の沖縄の日差しは容赦ない。しかし海に入るはこれ以上にない。予約しておいたダイビングショップへ行き手配を進める。ぎっくり腰のシマさんがいたのでボートを出してもらった。 ポイントへと向かっている間にタンクのセッティングを行う。サヤはライセンスを取っただけあって何も言わずともホースを繋げ1人で完成させた。 「普通に出来るじゃん」 「練習したからね!」 ヘヘっと自慢げに笑う。その笑顔は俺にとって太陽よりもまぶしい。 笑っていてほしい。 サヤが笑顔になれるなら、俺はなんだって出来るだろう。
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