44089人が本棚に入れています
本棚に追加
『クマノミのペアだね!』
文字と共にへたくそな魚の絵が描かれていた。
クマノミはひとたびペアになったら、例え相手が死んでもずっと想い続ける――前にそんな話をしたっけ。
俺もクマノミと同様、生涯をサヤに捧げ、誠心誠意尽くしたい。
そんな想いを胸に、サヤの左手をとってグローブを外す。グローブを一旦ポケットにしまい、代わりにエンゲージリングを取り出した。
薬指にそれを嵌める。
思った通り、サヤによく似合っている。
サヤは角度を何度も変えてじっくり眺める。手のひらを天にかざした。ダイヤモンドがきらきらと光に反射する。
笑ったせいで口の中に水が入ったようだ。すぐさまレギュレータークリアを行った。
海が怖いと泣いて怯えていた子はもういない。一人前のダイバーだ。そう思うとなんだか欲が出てしまった。
『ここでキスしちゃう?』
俺たちは命綱でもあるレギュレーターを口から外し、この美しい出会いの海で誓いのキスをした。
最初のコメントを投稿しよう!