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宿泊先はもちろん加賀美リゾートアイランド石垣島で、去年と同じ部屋で激しく愛し合った。
汗が引いたら今後についての話をする。
「ご両親に会わせてほしいんだけど、いつがいいかな?」
サヤの表情が少し固くなった。
「うちよりも、リョウのご両親に挨拶してからにしよう? 気に入ってもらえないかもしれないし……」
「うちの親は大丈夫だよ。父も母も好きな人と結婚しなさいって言ってくれてるから」
「本当に……?」
「本当。だから心配するなって。まずは女の子の家に行って許しを得るのが当たり前だろ?」
「そっか……ちょっと待ってね」
起き上がってバスローブをまとう。立ち上がりカバンの中からスマホを取り出すと再び隣に寝転がる。
「んー。もう帰ってきてるのかな。母はスウェーデンに行ってて」
「スウェーデン?」
そういえばサヤのお父さんが小樽で建築会社をやっていることは聞いたがお母さんについてはあまり聞いていなかった。
口ぶりからしてうちの母とは全然違う印象を抱いていたが。
「サヤのお母さんって何してるの?」
「アイスビルダーって知ってる?」
ん?――背筋にピリっと電流が流れた。
「リョウは知らないと思うけど母はね、宮の森リゾートしろがねで仕事してたんだよ。ほら」
あっと声をあげそうになった。正しく流れていた血が逆流するのではないかと思った。白銀チャペルの前で記念撮影をしてる母娘。少女のサヤと見覚えのある女。
「そうなんだ。それ、白銀チャペルだよね? 俺も行ったけど、もしかしたらどっかで会ってたかもしれないね」
知らない態でごまかした。普通に会話をし、表情を崩さずにいるのが精いっぱいだった。心臓が酷く乱れ喉が急激に干上がる。
「予定聞いてみるね」
「……うん」
俺はその女を知っている。憎み、蔑み、憐れんでいる。
伊東香。父の愛人だった女。
サヤが伊東香の娘ということは――。
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