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生きたまま溶岩に揉まれるような高熱にうなされ、丸2日苦しみ続けた果てに待っていたのは、父からの無慈悲な報せだった。
電話の機械音が鳴っている。けだるい体を起こし電話に応答した。
「……はい」
「お前が付き合っている子の名前はなんだ」
「なんで」
「清ちゃんは私の娘だ」
非情な声が心臓を貫いた。
「まさかお前達が出会っているとは……」
「何言ってんの。間違いでしょそんなの」
俺は軽く笑った。反面、額に滲んだ汗が一筋垂れ顎からシーツに流れ落ちる。そんな話は聞きたくない。間違いだって言ってくれ、早く、頼むから間違いだと。
「調べたから間違いない。それに香の夫は……子どもが出来ない体だったようだ」
喉が詰まる。
「お前の妹だ」
恋を知らなかった男が、何故サヤにだけ惹かれたのか?
すべてはこの体に流れている血のせいだったとでもいうのか?
「綾。全部私のせいだ。本当にすまないと思っているが……別れてくれ」
「簡単に別れろとか言うなッ!!」
怒り狂って電話口の父に怒鳴り散らす。
「俺がどんな想いでサヤを手に入れたと思ってんだ! 絶対別れない! 何があってもサヤと結婚する!」
「清ちゃんが、傷つくぞ」
「うるさいっ! 道理に外れてたのはお前らだろ! 俺たちは何も悪いことなんかしてない!」
電話を切るとすぐに父からメッセージが届いた。本文は何もない。画像が2枚添付されている。
1枚目。【DNA型父子鑑定書】と書かれた紙を撮影した画像。
名前の欄には【左海純】と【右城清】。
【親子関係 肯定:生物学的父親と判定できる】
【99.9%以上】
2枚目。名前の欄が【左海純】と【左海綾】になったもの。ご丁寧に俺の分まで鑑定したのかよ。
【親子関係 肯定:生物学的父親と判定できる】
要所の文言が1枚目と一致している。
この2枚の画面が意味するところ――俺とサヤが父の子である証拠だった。
俺は気付いた。父と伊東香が道理に外れていなかったらそもそもサヤはこの世にすらいないのだ、と――。
目の前が真っ暗になる。
いやだ、別れたくない。
どうすればいい。どうすればいいんだ……。
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