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熱があるのかないのかよく分からない状態が続いていたが俺はサヤが帰ってくるまでに料理をした。
何故料理をしようと思ったのかは分からないが、頭が酷く混乱していてとにかく何かをしていなければ気がおかしくなると思った。
会社から帰って来たサヤは机の上に並んだ皿を見てびっくりしていた。
「もう大丈夫なの!?」
「うん。だいぶ熱ひいたから。ごめんね、ここ数日迷惑かけちゃったね」
「全然いいけど……リョウがこれ作ったの? ミネストローネもある!」
「うん。見た目よくないけどな」
「そんなことないよ! ありがとう! 食べよっ!」
ふたりで食事にありつく。サヤは真っ先に大好物のミネストローネに手をつけた。
「美味しい。よくできてる!」
クシャっと笑うのだ。あぁ。サヤはなんて可愛いんだろう。本当に、可愛くて可愛くてしかたがない。
「でもちょっとだけ辛い気もする」
「やっぱ? ごめん塩入れすぎたかも」
「もうっ! 早死にしちゃうよ!」
何気ない笑顔が俺にとっては宝物だ。この笑顔を、この時間を失くすなんて、手放すなんて考えられない。
サヤがいない世界なんて、考えただけで恐怖だ。
箸を置いて立ち上がって背後から思い切り抱きしめる。
「ん?」
「ごめん。もうご飯どころじゃない」
風邪ひいたせいもあって、俺たちは触れ合っていなかった。数日ぶりのサヤの肌は甘く柔い。少し触れただけで理性が吹き飛んだ。ベッドに運んで触れ合う。
「サヤ、可愛いね。ほんとに可愛い」
妹に欲情しているという意識はまったくなかった。
俺の心はまだ何も受け入れてない。
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