4.アヤとキヨシ

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戸籍上はまったくの他人だ。知ってるのはごく一部だけだから、子供さえ作らなければいい。血の繋がりがあったとしても、普通じゃなくても、愛してる。生きづらいなら日本を出ればいい。 大切なサヤを失いたくない。 「……今日、大丈夫だから。早くちょうだい……」 付き合ってから今日まで避妊は確実に行っていたが、一瞬も躊躇わず埋めた。強い刺激に秒で達しそうになる。 「リョウ……愛してるよ」 「俺も。愛してる」 唇を絡め、指を絡め、全身全霊で愛を語り合う。 「……やばい、ごめん。いきそう……我慢できない……」 「……ねぇ、全部欲しい……リョウが欲しい……お願い」 それを求められるのは二度目だ。一度目は沖縄での恋人最後の日。大きな矛盾だと分かっていながら、俺は躊躇いなくサヤの体内に自分の全てを注いだ。 溢れて、零れ落ちても、何度も何度も――。 これは罪なのだろうか? サヤは、真実を知ったら怒るだろうか? 憎むだろうか? 気持ち悪いと思うだろうか? 俺は……サヤとの子供が欲しかった。俺たちの子供が欲しかった。 そんな当たり前のことを、当たり前に願った。 ただそれだけだった。
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