4.アヤとキヨシ

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翌朝、父に呼び出された。 会社にはもう1日休むと連絡し、サヤには実家に行かないといけなくなったとだけ告げた。何か察したようで深くは聞かれなかった。嘘はついてないが話せないでいることに胸が痛んだ。 「帰ったら、話そう」 「分かった。いってらっしゃい」 いつまでも隠してはおけない。帰ったらきちんと話そうと決めて家を出る。 密談は母のいる実家では出来ない兄の病室で行う。 俺を認めた父は立ち上がった。目線を合わせる。その目には威厳のような光が灯っている。 何を言われようとも絶対に別れない。そんな気概で父の目を見返す。 「家に入れ。TR社にはついさっき話を付けた。あと1週間で引き継げ。バリ島の開発責任者としてお前の席を作る」 矢継ぎ早に言われ脳の処理が間に合わなかった。 「何勝手に決めてんだよ。ばかじゃないの。いくらなんでも無茶苦茶過ぎるだろ」 「マスコミに嗅ぎつけられたらどうする。傷つくのはお前じゃない。だいたい異母兄弟で結婚なんてまったく現実的じゃない。子供だって作れない。そんな無理を彼女に強いるのか。女性の幸せを奪うのか」 何故この男は、もっともらしい顔をして、もっともらしい言葉を並び立てている? 「なにが女性の幸せだよ。サヤの幸せを勝手に決めるな。サヤは」 「清ちゃんは納得してくれた」 「は?」 「昨日、香と香の夫と共に清ちゃんにすべてを話した」 「昨日……?」 サヤは昨日、いつも通りに笑っていたじゃないか。 ご飯を食べて、何度も愛し合ったじゃないか。
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