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「ねーねーママ」
「んー?」
「このもじ、なんてかいてあるの?」
湊がエプロンの裾をひっぱり、壁に飾ってあるボードの文字を指さしている。
「海の外の、ことばだよ」
「どういういみ~?」
「半分に切ったオレンジのかたっぽは、このセカイにたったひとつしかない、運命の人っていう意味だよ」
「どうしてひとつしかないの?」
目を丸くしてコテンと首をかしげる。
私はテーブルに置いてあるフルーツバスケットからオレンジをふたつ取り出した。
「このオレンジ、どっちも同じ大きさに見えるよね?」
「いっしょじゃないの?」
「と思ったら?」
ふたつのオレンジを半分に切り4つのパーツにする。そしてそれぞれ対ではない方に断面を合わせる。
「ほら、どっちも合わないでしょ? 合ったように見えても、ちがうの。このオレンジにぴったり合うのはこれだけ」
「あー。ほんとだぁ!」
「パパとママはね、このオレンジみたいに、ぴーったりなの。だからずっと仲良しなの」
湊は納得したようだ。
「ママっ、ぼくはっ?」
「みぃも、たくさんの人の中から、みぃにしか合わない子を見つけてね」
「ちぃたん?」
「ちぃちゃんかなぁ~?」
「ちぃたんだよっ! だってだいすきだもんっ!」
「うんうん。そうだね。みぃはちぃちゃんが大好きだもんね」
「ちぃちゃんと、けっこんするってやくそくしたから!」
「わぁ、そうなの? パパとママ、たのしみにしてるからね!」
エヘッと笑う息子の頭を撫でた。
「オレンジ、たくさん切っちゃったから食べよっかぁ? パパ呼んできてくれる?」
「うん!」
<了>
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