6.純と香 コオルリンゴ

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「分かりました。靴はなんとかします。ところで伊東さんはどのようにしてここへ?」 ありがちな雪の影響でこちらの企画側の人間もスウェーデンから来るアイスビルダーチームも足止め食らっている。当然彼女も一緒に遅れてくるものだと思っていた。 「私は一足先に日本に帰って来ていましたので」 「そうだったんですね」 私も別件で北海道入りしていたので足を阻まれずに済んでいる。 特に南の島や北国では可能な限りスケジュールに余裕を持たせろという父からの教訓がさっそく生かされた。 「揃うまでぼーっとしてるのもなんですから、先に私達だけで打ち合わせをしましょう。昼は?」 「まだです」 「では13時にホテルの中のロイヤルキッチンというレストランでお待ちしています」 「分かりました」 香は背を向け歩いて行った。背中で黒髪がちらちら揺れている。 第一印象は、むしろ悪かった。 それなのに強烈に惹かれるものがあったのも事実だった。
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