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白銀チャペルを作るためには建築家等以外にも氷彫刻師という特殊な技術者の協力が必要だった。
まず国内外のリストアップし検討を始めると、雪まつりなどが行われる雪国においてその職種はさほど珍しくないと知った。
数はそこそこいるが持っているセンスは様々。ロボットや怪獣などダイナミックで夢のある作品が多く並んでいる中で、小指の一突きで壊れるのではないかと思うほど繊細で美しい作品を作っている人がいた。
一目で気に入った。それが伊東香だった。
スウェーデンのビルダーチームに属し、最年少でモニュメント賞を受賞。また日本国内でもすでにいくつも賞を受賞している女性アーティスト。
奇しくも彼女はスウェーデンのアイスホテルにも携わっていた。担当した部屋は『花』というテーマで全面に繊細な彫刻が施されており、彼女を味方にすれば素晴らしい作品が出来ると確信した。
すぐさま所属する会社にオファーを出し、交渉は無事成功した。さらにありがたいことに香だけではなくアイスホテル作りに携わったチームの何人かを一緒に派遣してくれることになった。
私はこの企画を絶対に成功させなければいけなかった。
成功させなければ、父や祖父だけではなく婚約者とその家にも示しがつかない。
部屋の電話が鳴った。受話器を持ち上げる。
「純さんですか? 春です」
半年後に妻になる人――風間春からだった。
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