6.純と香 コオルリンゴ

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洋食レストラン『ロイヤルキッチン』の入り口で待っていた香と個室に入りそれぞれ適当に昼食を頼んだ。 私は明太子クリームパスタセットを。香はビーフシチューとミネストローネを。 汁物に汁物を持ってくるとはなかなか変わっている。 サラダとコーンスープを交互に口にしながら、外では分かりづらかった顔貌を盗み見た。 しなやかな黒髪や白い肌よりも、切れ長の目元が印象に残る女性だった。 目が合うと逸らしたくなるような冷たさ。その血の通わない感じが西洋画でも見ているような錯覚を引き起こす。 「ミネストローネがお好きなんですか?」 「まぁ」 そっけない返事。 世間話を振っても一言二言返事をするだけでまったく弾まないので会話は諦め食べることに専念した。 「これなんですが、今更ながら思うところがあります」 食事を終えそろそろかとタイミングを見ていると、彼女の方から話始めた。テーブルに出されたのは事前に渡してあった計画書だった。 「氷にするのは、チャペルの外観と中の一部だけですか?」 「はい。祭壇までを氷にしようと考えております」 ゲストの椅子やピアノはガラスやホワイトカラーのもので全体の調和を取ろうと考えていた。 香が私に向けた攻撃的ともいえる視線に、これは反論が入ると察知した。ウェイトレスを呼び先にコーヒーを持ってくるように頼んだ。
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