6.純と香 コオルリンゴ

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当初から春の言動に疑念を抱いていた私は、密かに悟のDNA鑑定を行った。 結果、悟は正真正銘自分の子だった。 そもそも春が浮気をしているという疑念自体が妄想だったのかもしれない。 自分が配偶者以外の人間を想っているからといって、相手も同じだと思うこと事態が浅ましい発想だったのかもしれない。 父や義父からは2人目を命ぜられていたが、香と蜜月状態の私は徹底して行為を避けていた。 もともとあまり家にはいないが、自宅に泊まる(・・・)際は眠りが浅いという理由をつけてベッドも分けた。 実際、子作りを再開するのが早すぎる。 恐らく左海家から出られないかと思い始めている私の心の中を察していて、繋ぎとめる策のひとつなのだろう。 体よく断り続けると、春はついに実力行使に出た。 私はその夜、風邪をひき自室で悪夢にうなされながら眠っていて、どうも体がむずむずするなと目を覚ますと、春の口内で弄ばれていた。 なにを――驚いて悲鳴が漏れた時、彼女は身を起こしてまたがり、私を飲み込んだ。 肉体的な気持ちよさと、精神的な拒絶感。 不快なアンビバレントに揺さぶられ目の前が眩んだ。 「今日は、赤ちゃんができる気がするんです……」 これまでの人形状態だった春が、自ら腰を振り、奇妙な程の積極性で精を搾取しようとしている。 まさか控えめで従順な彼女が、夫が体調不良の時に夜這いをしかけるとは思っていなかった。 「……春さん、聞いてください。僕は……」 あなたを愛していないし、これから先も愛すことはない。 私とあなたはもう、最低限の『おつとめ』を果たした。 もう、やめませんか。 あなただって同じ気持ちなのではないか――。 「何も言わないでください」 静かだが、異様な迫力をたたえた声に言葉が遮られる。 「……私の気持ちも、分かってください……」 苦しげに言ったその意味がよく分からなかった。さっさと役目を果たしてしまいたいという意味なのか……。 自分の気持ちに反して、まだ若い体は女性の体に反応し、手綱を握れずなすがままになった。 春は子供が出来る予感があると言ったが、さすがにたったの一度では難しいだろうと思っていた。 しかし――。
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