6.純と香 コオルリンゴ

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私と香は25階のコンシェルジュフロアを通じて36階のセキュリティフロアに向かい、このホテルで一番大きなスイートルームに入る。 「どうぞ、そちらのテーブルセットにでも」 コーヒーをふたり分用意して話を再開するとますますヒートアップした。 香の話す言葉は私の神経を逆撫でた。香も同じだろう。 もう駄目だ、無理だと何度も匙を投げかけるも、不思議と最後はお互いの意図を汲んだ折衷案や解決策にたどり着けた。腹を割ってぶつかり合ったからこそなのかもしれない。 いつの間にか夜中の1時を過ぎていた。香は俯いたまま力尽きていた。今日はここまでか。 「伊東さん」 肩をゆすり声をかけると香はうたた寝から目覚めた。 「こんな時間になってしまって申し訳ない。部屋に戻ってください。続きはまた明日にしましょう」 「今考えないと間に合いません」 そう言って彼女は冷めたコーヒーを喉に流し込んだ……と思ったら気管支に誤嚥したらしくむせた。 「大丈夫ですか!?」 「だ、だいじょ……ごほっ!」 口元を手で覆ってさらに激しくむせた。すぐにティッシュを引き抜いて渡した。 真っ赤で涙目になった顔が可愛いらしくてつい声を出して笑ってしまった。 烈火のごとく怒りだすのではと心中で構えたが、以外にも俯くだけに留まった。 「まだ1日目ですから」 はやる気持ちは分かるがプロジェクトはこれからだ。いきなり無茶すれば後がもたない。
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