気になるあの子
全1/3エピソード・完結
1/11

気になるあの子

自宅から仕事場までの道の途中に公園がある。 ここ最近は公園の周辺を変質者がうろついているという噂があり、遊びに来る子供は激減しているらしい。 現に通勤中に見かけるのは、犬の散歩やジョギングなんかで通りすがる大人や、風景を眺めながらベンチで足を休めるお年寄りくらいだった。 私の仕事は三交代で夜勤がある。 六月に入って早々に、急病やら事故やら家族の不幸やらで急に数名の職員がやめてしまったせいで、私は人員調整のためにと期間限定で専従夜勤をすることになった。 月に二、三日は日勤もあるけれど、それ以外は夜勤だ。 今日も夜十時を過ぎたところで出勤する。 街灯のある道路は明るいけど、夜の公園はやたらと暗い。 錆びついた遊具達は闇に溶けて見えず、ブロック塀の囲いの中には夜闇と静謐だけが満ちていた。 この公園は、深夜になると幽霊が出るのだという噂もあるらしい。 しなし生まれてこの方一度も怪奇現象にあったことのない私からすれば、心霊現象なんてちっとも怖くない。 一つ恐れるものがあるとしたら人間だが、地味な上に平均的な男性の身長を余裕で越す可愛げのない私を、好んで襲う輩はいないだろう。 ふと気配を感じて公園内に視線を向ければ、トイレの方に人影があった。 私は咄嗟に近くの電柱の陰に隠れて様子を伺った。 足早に道路に向かって歩いてくるのは、エメラルドグリーンの帽子を被った金髪の女の子。 対面の道路の灯の下まで来ると、少し影がかかっていても可愛らしいと分かる顔立ちが垣間見えた。 この公園のトイレは防犯のためか隅にあるものの 道路から見えるようになっていて、男子トイレと女子トイレの入り口は同じ方向ではなく西側と東側に分かれている。 二つの入り口の近くには、道路にあるものと比べて暗いものの街灯が立っている。 だから見間違えることはない、その子は今男子トイレの方向からやって来た。 仕事場とは反対方向に歩いて行く少女の、華奢な後ろ姿が見えなくなってから電柱の陰を出た。 特徴的なあの女の子を見かけたのは専従夜勤をするようになってから三度目だった。 しかも生活サイクルが被るのか毎度トイレから出てくるところを目にするのだが、今回の遭遇で確信を得た。 私の予想は正しかったのだ。 あの子はきっと外人で、男女マークの意味を知らないで男子トイレを使っているに違いない。
1/11

最初のコメントを投稿しよう!