執念の守護霊と、愛の怨霊 破

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◇◇  長坂邸の客間には、中央に大きなテーブルがある。  それを挟むようにして革張りの高級なソファが2つ鎮座している。    そのソファに腰をかけたまま、テーブルにうつぶせになっている二人。  長坂喜一と幸子の夫婦だ。    二人は後頭部から黒い血を流してはいるものの、息はまだある。  どうやら致命傷ではなかったようだ。  彼らを殴打した大理石の灰皿が、けがれた血で汚れたままソファの後ろに転がっていた。  私はそれを見つめながら、ニンマリと笑った。   「ふふ、生きていてよかったわ。この程度のことで死なれたら困るもの」  と、思わず口をついて汚い言葉が出てしまう。  他人の耳に入ったら、性格が悪いと思われてしまうかしら?  ふふ、でもそんなこと気にしないわ。  だって、私は決めたの。  愛する者が望むように振舞うのが私の役目。  その為なら他人からどう思われたって構わないと――
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