君との思い出はきら星のようで

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   この辺りはその昔、『お稲荷(いなり)さんの森』と呼ばれていて、神様が住む森として大切にされてきた。森は姿を消したものの、おばあちゃんいわく、今でも神様がどこかでひっそりと暮らしているのは変わっていないそうだ。    その為か、お稲荷様の使いである狐様……つまり「こんこん様」をはじめとして、あやかしや幽霊が寄ってきやすい。  それは『ファミリーセブン南池袋店』も同じなのである。    今、私の目の前で懸命に尻尾を振っている、真っ黒な毛並みのチワワの守護霊。  きっとお兄さんに大きな恩義があるのだろう。  だからチワワは小さな体にも関わらず、大きな愛でお兄さんを守っているのだと思う。    そんなことを考えているうちにお兄さんが海苔弁当とお茶をレジへ持ってきた。  私は慌ててカウンターの中へ入ると、お弁当を温めるか問いかけたのだった。   「そうっすね。あっためてください」 「はい! かしこまりました!」  背後にあるレンジにお弁当を入れてボタンを押す。  レンジが音を立て始めたのを確認してから、先に会計に済ませるために再びお兄さんに向き合った。  すると彼は頭をかきながら、つぶやくような声で問いかけてきた。   「あの……。さっきペットがどうこうって、言ってましたよね?」 「えっ!? ああ、あれは勘違いです! あはは……」  手をぶんぶんと横に振って必死にごまかす。  だって「チワワの守護霊が見えます」なんて言ったら、普通の人なら怖がってもう二度と来なくなっちゃうに決まってるから。
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