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「ほらー僕、高校生じゃん? そーゆーのに興味はあるんだけど、年齢制限があるお店には入れないからさ。あ、お金は半分出すから、好きなの買ってきていいよ」
「え、え、いや、それって……俺が店に行って選んで来い、ってこと?」
「うんっ」と明るい返事が返ってくる。
「お兄ちゃんのチョイス、楽しみにしてるね」
声変わりしても尚可愛い声の持ち主は、しっとりとした声で電話越しに囁いた。
*
それから数日後、俺は『そういう店』の前を何往復かしていた。こういうお店は来たことがない。恥じらいなく入れる人を尊敬する。
そろそろ怪しまれる、意を決して入ろうか。いやいやいや、まだ心の準備が! やっぱり一人で来るんじゃなかったと後悔しても、一緒に来てくれそうな友達なんて……
一瞬、ひとり思い浮かべたヤツもいたが、絶対おちょくられるのでやめた。
結局そのあと、数分間うろついた後に、戦場に立ち向かう戦士の心持で店内に向かったのであった。
昼間なのに薄暗い店内は、安っぽい電飾やPOPで溢れていた。
レジには男の店員が一人。よかった、女じゃなくって。
どこに何が置いてあるかわからないので、適当に店内をうろつき、ようやく目的のコーナーへたどり着く。
「ふう……」
緊張して息苦しくなってきた。さっさと買うもの決めて帰ろう。
そう思って、商品を眺めていると、ふと疑問に思うことがあった。
好きなもの買ってきてね、と言われたのだけれど……
(まどかの求める玩具って、なんだ?)
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