冬の終わり

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ーー小さな嘘をついた。明日にはここを去る君に。 土の上にはっきりと靴跡が残ると、冬の終わりを感じられる。寒さが和らぎ、土が固くなった体を解そうと伸びをした証拠なのだと、誰かが言っていた。 直に、この山の主が目を覚まし、大きなあくびをするだろう。すると、鳥獣はもちろんのこと、草花も起き出してきて、目にもうるさくなる。その中を駆け抜けた先にある、古ぼけた小屋が私たちの秘密基地だった。そう、"だった"になるのだ。 昔は私の方が大きかった。いつの間にか君を見上げるようになっていた。気づけば目で追っていた。いつも君と居たから、"いつも"が思い出に変わっていくことが寂しくて、でも君を縛りつけたくはなくて。私は、小さな嘘をついた。 「さびしくなんて、ないよ」 さようならは言わなかった。 小屋に入った時、私は先客を見つけて。先客の、計算なんてしてないだろうに、100点満点の笑顔にやられて。次いで、感情が溢れだした。 「僕は寂しいよ。だから帰ってくる。待っていてくれますか?」 さようならは言わなかったーー
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