女王様と俺 思い出

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「し、執念ぶけえ・・・」  ぼそっと、池山が横を向いて小さくつぶやいた。  一瞬、キーンと、何かが走った。 「池山さん…。みんなに聞こえてます…」  困り顔で江口が教える。  しかし、問題の生はこれだけ語られてもすましたものだ。 「ふうん。結果オーライじゃないか?そのまま頑張って会社まで突っ走ったんだし」 「それをあんたが言うか!!」  岡本は頭を抱える。 「なんぼなんでもさあ、立石…」  今まで何度言ったかわからない呪文を繰り返した。  生の糠に釘は今始まったことではないので、おだやかに徹は流す。  そして、中学三年の秋に再会した時に生がずいぶんと大人びたことを思い出した。 「大人びた…?さらに背が伸びたからか?」  首をかしげる生に、池山がぽん、と手をたたく。 「あ、あれじゃね?十五の夏休みと言えば…」  彼がまたいらぬことを言いそうな気配に江口と岡本が目を見開くが、するりと言葉出て行ってしまった。 「処女喪失!」 「い、いけやまくん・・・?」  慌ててフォローに回ろうとした岡本だったがそんな心遣いも空しく、 「ああ、そういや確かに」  あっさりと生が認めた。 「だろ?そうだよなあ、夏休み!!」  答えを言い当てて得意顔の池山の首を背後から岡本が締める。 「お前なあ…」  初夏の模試で見かけた少女は短かった髪も伸び、硬質で中性的な印象から伸びやかで柔らかな雰囲気に変わっていた。  まっすぐ背筋を伸ばして座る横顔を何度盗み見しただろう。 「え?だいたいみんな初体験って中学生までに終えるんじゃねえの?」  性懲りもなく池山が話を続ける。 「俺も十五の夏だったし」 「…お前が早すぎるんだよ」  二日酔いなのか、だんだん痛み出したこめかみをぐりぐりと拳で押しながら岡本が答えた。 「んじゃ、岡本はいつなんだよ?まさか、童貞?」 「んなわけあるか!!俺は標準的に大学に入ってからだよ」 「徹は?」  勝手にキッチンでコーヒーを入れだした生をちらりと見てからぼそりと答える。
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