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「ちょっと待ってくれよ。精神科の閉鎖病棟にいる患者で、どこの誰かもわからない相手の言うことを信じるのかい!そんなもの妄想に決まってるじゃないか」
「僕もそう思うんですが、実はその人を紹介してくれたのは知り合いの刑事さんでしてね。その人の家族が惨殺されたのは間違いないみたいで、どうやらその人の精神がおかしくなってしまったのは、家族が皆殺しにされる現場を目撃したかららしいんです。だからその時に、犯人も目撃してるようです」
「で、私がその一家皆殺しの殺人犯だって?そんなバカな!」
「ちなみにこの人なんですけどね」
若者はスマホを取り出して、画像を私に見せた。
そこには、いかにも精神を病んでいそうな、やつれた感じの中年女性が写っていた。
しかしながら、私はその女性をよく知っていた。
その女性の家族のことも知っていた。
それは近所に住んでいた、わりと懇意にしていた一家だった。
少し背中に冷や汗をかいた。
冷たいものが流れ落ちた気がした。
「ちなみにだが、その女性はどうやって家族が殺されたと証言したのかね?」
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