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欠けた月。
「君は、恋をしたことある?」
横顔でたずねられた。
「━━え」
唐突な質問にビックリした。
でも探してみた。記憶の中から、それらしき感情を持ったことがあるか否かを。
━━けど、そんなもの、
「ないです」
「一度も?」
「はい」
女子校に通っている事は理由にならない。
みんなどこかで出逢いを見つけ、くっついては別れるを繰り返している。
それは本当の恋愛ではなく、虚しさを埋める為に、恋だと錯覚しているだけだ。
私はそんな愚かな間違いさえ、する気が起こらない。
それに、普通の公立で共学だった中学生の頃も、誰かを好きになったことなんて、ただの一度もなかった。
「変ですか? 私」
「いや、君はまだ若いし、そういう相手とめぐり逢えていないだけだと思う」
歳は関係ない。
こんなつまらない世界で、恋心なんて生まれるわけがないのだから。
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