明日がみえなくて

14/23
前へ
/23ページ
次へ
  「僕の初恋はね、高校一年生の時だった。相手は同じクラスの女子。それから二年生になって、僕から告白をして付き合い始めたんだ」 「……そうですか」 なんでそんな昔話を私に? 「で、その彼女が、今の僕の妻」 「━━初恋の人と結婚したんですか!?」 「そうだよ。おかしい?」 「いえ、そんな話、ドラマや映画の中だけかと思ってたから」 「そんな事はないよ」 笑いながら彼は言った。 「奥さんのこと、今でも変わらずに好きなんですか?」 「もちろん」 「……奥さんの方は?」 「同じだと思う」 だったらどうして、今あなたの隣にいるのがその人じゃないの? 訊いてもどうせまた、はぐらかされるに決まってる。 「……でもね、だからといって全てが思い通りにいくとは限らないんだよ」 指輪をはめた左手を、軽く反らし見つめてそう言ったあと、成瀬さんは口を閉ざした。 どういう意味? 一体、何があったの? だけどそれ以上は、きっと立ち入り禁止。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加