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「指輪を外さないでいる僕を、哀れみの目で見る人もいるけど、そんなのどうでもよかった。
結婚してまだ一年しか経ってなかったからね、もう少し夫婦でいてあげたいんだ。
彼女も月を見るのが好きだった。
よく散歩の途中に立ち止まって、二人で手を繋いで月を眺めた。綺麗だねって呟いて」
━━違った。
成瀬さんと私が見ていた月は、
抱えていた虚無感は、
まるで別のものだった。
「━━弥生ちゃん?」
恥ずかしくて、情けなくて、
私はいたたまれずに、その場から逃げ出した。
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