明日がみえなくて

2/23
前へ
/23ページ
次へ
  《今この窓から飛び降りたら、皆どんな反応をするだろう》 授業中に頬杖ついて窓の外を眺めながら、いつもそんなことを考える。 腹が立つほどに透き通った青天の日は、尚更にそれを思う。 この教室は建物の二階にあり、窓の下は土の地面だ。 痛いだけで死ねないのは充分承知している。 皆の反応だって、大体の見当はついていた。 ━━━まずは絶叫。 窓の外に、こぞって身を乗り出すスカートの群れ。 一斉に手にするスマホ。 死にぞこなった私の姿が、そこに次々と無許可で収められて、一気に拡散されてゆく。 私の行動が、どうでもいい生徒達への娯楽と化す。 そんなの冗談じゃない。 だから私は飛び降りたりなんかしない。 それでも毎日空想する。 この息苦しい箱の外を、空中を、 一瞬でも浮かんで落下する、私の自由を。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加