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━━あの人またいる。
昨日の今日だもの、服が違っても見分けくらいはつく。
彼は昨夜と同じ様子で、月の光を浴びていた。
━━どうしよう、今日はやめておこうか。
自転車から降りずに素通りするか迷っていると、その人が私の方を見た。
会釈をされて、反射的に頭を下げてしまった私。
仕方がない。出来るだけ彼から離れた位置にいよう。
とはいえ、欄干に横並びしている人物のせいで、最初は気が散った。
けれど満月に見入ってしまえば、赤の他人のことなど、もうどうでもよくなる。
三十分ほど経った頃、男性の姿がいつの間にか消えていた。
特に気にもせず、私はもう少し、その場に留まることにした。
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