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今日は雨。
遠くの台風の影響で、こちらにも強い雨風が、校舎の窓を叩きつけていた。
怒るように向かってくる雨水のせいで、窓の外が見えない。
眺めるものがなくて、授業が尚更つまらなく感じた。
いっそのこと外に飛び出して、馬鹿みたいにずぶ濡れになってしまおうか。
雨に打たれ、風にさらわれ、私の体は溶けながら散り散りになり、最後は微塵もなくなってしまうのだ。
そうなれば、どんなにか楽だろう。
休み時間になると、帰りの電車が止まらないかを気にしている子も少なくなかった。
自転車通学の私は、今日はバスで来た。
こんな天気の日は、いつも母が車で迎えに来る。
それは私だけに限らず、下校時には沢山の車が路駐で道を塞いだ。
ゆとり世代。
苦労が足りない。
よく言われる。
大人は何も知らないくせに。
確かに不便を感じたことはそれ程ない。
物理的には。
だからといって、心が満たされるとは限らないのに。
ふと頭に浮かんだ。
あの人は、どうするんだろう。
私と同じように、月を眺めるのが日課になっていた、あの男の人。
月を見られない夜は、いったい何を思うのか。
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