明日がみえなくて

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すると彼は「ははは」と笑い、 「ナンパや不審者と勘違いされたら困ると思って、それで声を掛けないようにしてた」 「……なら、今はなんで」 「なんでだろうね。なんとなくかな。迷惑だった?」 穏やかな口調。 性格も温厚そうに見えた。 「いえ、迷惑じゃ」 「そっちに行っても大丈夫?」 「え……あ、はい」 右隣に並んだ男の人は、思っていたよりも背が高かった。 素性も知らない年上の男性に、多少の緊張はあっても、警戒心はなかった。 「だいぶ涼しくなってきたね」 「そうですね」 軽く流れた風が、季節の移り変わりを思い出させる。 「僕の名前は成瀬。君は?」 「有本…弥生です」 「有本さんは、高校生?」 「はい。いま二年生で、17歳です」 「17か……若いね」 「成瀬さんは、幾つなんですか?」 「僕はおじさんだよ。今年で29になった」 おじさん発言を否定したかったけど、一回りも年が離れているなら、その通りだ。 でも、 「もっと若いかと思ってました」 「そう? 嬉しいね」 顔は笑っていたけど、適当に受け流された気がした。 この人が《おじさん》なら、私は《こども》だ。
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