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海音の死から一月ほどが過ぎ、台風の季節がやってきた。 過去最大のものが上陸したとテレビで報道があり、天候は荒れ狂っていたが、それに反して意外なほど平穏な気持ちで今日まで生きてきた自分に、純粋に驚いている。 まだ実感がわかないからかと自問しても、それだけではないとわかるのは、ひとえに側で見守ってくれる友人――星司の存在のおかげだろう。 それでも時には、虚しく空いた心の穴を埋めようと、浴びるように酒を煽っては嘆いたこともあったが、星司は呆れることもなく辛抱強く話を聞き、慰めてくれた。 星司こそ、友人を亡くした痛みがあるだろうに、いつも和泰の気持ちばかりを優先して、ひっそり寄り添って、静かに耳を傾けている。 時折、寝惚けて星司を海音と呼んでしまった時、痛みを堪えるような顔をしていたのを見て、心底申し訳なく思った。 それが顔に出ていたのかもしれないが、星司は無理をして微笑み、まるで兄のように和泰の髪を掻き撫で、時には震える体を抱きすくめてくれる。 詫びると水くさいと叱られたために、以来詫びの代わりに礼を述べるようにすると、誉めるようにまた頭を撫でられた。 それが照れ臭くて身をよじると、星司の眼差しがまるで大切なものを見るようにやわらかな色を浮かべている気がして、けれど気づかないふりをする。
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