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触れ方までもそんな気がすることがあるが、意識してしまえば今までのように接することも難しくなると、自分に言い訳しながら、目を逸らし続けた。
具体的なことをされたり、言われたりしたわけではないから、いいのだ。それに、もしかして思い込みかもしれない、と思った時、一際強く風が窓を揺さぶり、びくりと肩を竦める。
電車で片道一時間ほどかかる場所に勤めているのだが、台風の影響で運転停止となったために、一人きりで家に籠らなくてはならなくなった。
ふいに訪れる心細さに、二十二にもなって、と苦笑が漏れる。
見たい番組も特になく、適当に選んだ好みの CD をプレイヤーに入れていると、着信が鳴った。
仕事のことかもしれないと、すぐさま確認すると、受信ボックスに星司からのメールが届いていた。
『一人で大丈夫か?早めに帰って行くから、夕方くらいまで待ってくれ。心細くても、泣くなよ』
「泣くなよって、お前な。俺はこどもじゃないって」
文面に応えたところで、返事が返ってくるわけではないが、思わず声に出して言っていた。自分の声が些か弾み、自然と頬が弛んでいくのを認めながら、明るい曲調の音楽を選曲する。
星司が来るのを待ちわびながら、ソファに横になっているうちに、いつの間にか眠りについていた。
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