威風堂々

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「執行番号16875934番!」 その声にハッと瞳を開けるとそこにはだだっ広い真っ白な空間が広がっていた。 さっきまで見えていたのは……確か青空だった気がする。それが今はどうだろうか。辺りを見渡せば真っ白な床に真っ白な壁。上を見上げれば果てなく高い天井が広がり、その中心にポツンと自分一人が白い椅子に座っていた。 「………」 気付けば着ていた服も白い検査着のような簡素なものに変わっている。 「いつのまに……」 そう独り言を呟くと、先ほどよりも大きな声が響き渡った。 「聞こえないのか!執行番号16875934番!」 誰のことを呼んでいるのかと辺りをキョロキョロと見回してみるが自分以外誰もいない。と、なるとこの長ったらしい番号はどうやら自分の番号のようだ。 そこまで考えるとゆっくりと立ち上がり歩き出す。 すると、先ほどまで何もなかった場所に突如、テーマパークのチケット売り場のような簡素な窓口とパイプ椅子が表れた。 「執行番号16875934番!座れ!」 どうやら先ほどの大声はこの奥から聞こえてくるようだ。目を凝らしてみれば何かの人影が見える。 「……」 仕方なく指示された通り椅子に腰かけると、窓口の奥の人物と目があった。目があった、というより目があったような気がした。と言った方が正しい。自分に向って大声を上げていた人物は黒いフードを目深にかぶり口元しか見えなかった。 「お前が16875934番か」 「……はぁ、恐らく」 そんな長ったらしい番号をどこかでもらった記憶はないが、とりあえず周りに自分しかいないので来てみました。と説明するのも面倒くさく、濁した返事をする。 「よし、ではお前に宣告する。お前は死んだ」 「……はい?」 あまりに突拍子もない話に思わず嫌味な声で返事をしてしまった。しかし、当人は然程気にも留めていないようでその反応に薄く笑うと先を続けた。 「ここは現世に未練を残して亡くなった者や自分が死んだことに気付かない者が集まる場所だ。そういう者たちが集めら死を受け入れ先に進むか、それともここで消されるかその判断を受ける場所だ」 「へぇ……」 「お前にはこれから1日間の猶予を与える。その間に自分が何故死んだのかを突き止め、成仏しろ」 かなり投げやりな指示に思わず脱力する。
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