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唇を噛んで拳を握ると、横から伸びた手が上から包み込んできた。
はっとして辻の顔を見ると、静かに微笑んでいる。
そうだ、俺には辻がいるから、大丈夫だ。
辻がいるから、俺は変われたんだ。
「蓮、俺もずっと、謝りたかったんだ。ごめんな」
元カレ――蓮が一瞬、泣き笑いのような顔をしたが、ほんの少しの間俯いた後、顔を上げた時には、俺のよく知る、無邪気な笑顔になっていた。
「本人がいないところで何言ってんだろうな、俺たち」
なんて、白々しいことを言ってのけた蓮に、俺も笑みを返す。
俺たちの間にはもう、わだかまりはなくなっていた。
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