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腕の力が緩む。
ダメだ、言うな。
頭の中で声が響くが、もう止められなかった。
「君が、最後に別れた恋人に似ているから、気になってつい、目で追ってただけだ」
「……そう、だったんですか」
「そうだ。だから、君はもう俺のことは忘れて、君自身を見てくれる人を……」
「今日、話している時ずっと、その人と俺を重ねていたんですか」
違う。
キスをされそうになった時だ。
それまでは、ちゃんと辻を見ていた。
「――そうだ」
「俺と話すと、その人のことを思い出して辛いから、振ったんですか」
それもあるけれど、それよりもお前を傷つけたくなかったからだ。
俺のような思いを、してほしくなかった。
「――そうだ」
これ以上、心無いことを口にする前に立ち去らなければと、思うのに、なかなか動き出せないでいると、突然後ろから肩を掴まれ、辻の顔が近づいて。
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