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「……ん」 口腔をまさぐられる、乱暴で濃厚な口づけだった。 頭の中がじんと痺れて、足から力が抜けると、辻に腰を支えられた。 唇を離し、欲情と悲痛な色を滲ませた瞳で、俺を見つめながら辻は囁くように言う。 「それなら、俺がその人の代わりになります」 「だめだ、そんなことをしたら、君が辛いだろう?」 「いいえ、俺はあなたが、誰かと重ねてでも想ってくれればいいんです。それに、俺はずるい人間なんです。あなたが、俺を傷つけているという罪悪感で、ずっと俺を忘れないでいてくれればいいと、そう思っているんです。だから――」 あなただけが、悪いのではありません。 そう言って、辻はもう一度俺にキスをした。 俺はキスをされながら、自分を責めていた。 どうして俺は、辻のようなことをあいつに言ってやれなかったのかと。 あの時、自分だけが傷ついていると思い込んでいて、あいつがどんな気持ちだったかなんて、考えもしなかった。 そしていざ自分が同じような立場に置かれたことで、ようやく気が付いたとしても、今更どうにもならないのにと。 後悔や自責の念もあった。 けれどそれを超えるほど膨らんでいくのは、目の前の男への、抑えがたい恋慕であることを感じて、静かに涙を零した。
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