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7
それから俺と辻は、恋人のような関係になった。
辻は俺を好きだと言うし、キスも、それ以上のこともした。
二人で出かけるようなこともあって、とても満ち足りた気持ちだった。
それでもただ一つだけ、俺の中で気がかりなことがあって、辻を大切に想うならば、そろそろけりをつけなければいけないと思っていた。
それは、過去を乗り越え、辻に好きだと伝えることだ。
俺の中で、辻の存在は誰よりも大きく、大切なものになっているが、どうしてもあと少し、何かが足りなくて、自分の気持ちに自信が持てずにいた。
好きだと伝えること自体に抵抗はないが、ただ、辻の誠意に応えるには、本当にそうだという確信を持たなければならないと思っている。
だから未だに、好きだということは躊躇って口にしていない。
最も、言葉にしていないだけで、俺の気持ちは溢れているだろうが、言葉にするのとしないのとでは違う。
俺は本当に、元カレを抜きで、辻を好きになれているのだろうか。
辻と待ち合わせをした場所で悶々と考えていると、通りを行く人の中に、見知った顔を見つけた。
向こうもこちらに気が付き、立ち止まる。
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