7

2/4
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「怜音……」 「お前は……」 互いに驚いて顔を見合わせていると、後ろから駆けてくる足音が聞こえた。 「すみません、怜音さん!遅くなりました。……その人は?」 乱れた息を整えながら、辻の視線が俺からその人物へと移る。 「えっと……」 どう説明したものかと逡巡していると、その人――元カレが察してくれたのか、助け舟を出してくれる。 「俺は怜音の、大学時代の友人です。しばらく連絡を取ってなかったんですけど、今偶然ここで会って」 ――大学時代の友人。それはあながち嘘ではない。 大学時代は確かに、友人として過ごした。 関係を持つようになったのは、社会人になってからだ。 「ああ、そうなんですね。積もる話もあるでしょうから、俺は退散しましょうか?」 「いいえ、とんでもない。俺はまた別の機会にします。二人とも、今日は約束してたんでしょう?」 二人の視線が、俺に向けられる。 どうやら決定権は俺にあるようだ。 辻の方を見ると、なんだか少し悲し気な顔をしている。 もしかして、気づいているのだろうか。 それならば。 「俺も少し、お前と話したいことがある。でも、辻も同行させたいけれどいいか?」 予想外の申し出だったのだろう。 辻も元カレも一瞬驚いた顔をしたが、了承の意を得て、近くの喫茶店へ三人で向かった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!