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「怜音……」
「お前は……」
互いに驚いて顔を見合わせていると、後ろから駆けてくる足音が聞こえた。
「すみません、怜音さん!遅くなりました。……その人は?」
乱れた息を整えながら、辻の視線が俺からその人物へと移る。
「えっと……」
どう説明したものかと逡巡していると、その人――元カレが察してくれたのか、助け舟を出してくれる。
「俺は怜音の、大学時代の友人です。しばらく連絡を取ってなかったんですけど、今偶然ここで会って」
――大学時代の友人。それはあながち嘘ではない。
大学時代は確かに、友人として過ごした。
関係を持つようになったのは、社会人になってからだ。
「ああ、そうなんですね。積もる話もあるでしょうから、俺は退散しましょうか?」
「いいえ、とんでもない。俺はまた別の機会にします。二人とも、今日は約束してたんでしょう?」
二人の視線が、俺に向けられる。
どうやら決定権は俺にあるようだ。
辻の方を見ると、なんだか少し悲し気な顔をしている。
もしかして、気づいているのだろうか。
それならば。
「俺も少し、お前と話したいことがある。でも、辻も同行させたいけれどいいか?」
予想外の申し出だったのだろう。
辻も元カレも一瞬驚いた顔をしたが、了承の意を得て、近くの喫茶店へ三人で向かった。
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