8

1/1
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ

8

「よかったんですか?」 「何が?」 用事があるからと言って、先に店を出た蓮に別れを告げた後、俺と辻は冷めきった飲み物を口にしながら、あえて隣同士に座ったままでくつろいでいた。 「彼とよりを戻さなくて、よかったんですか?」 「いいんだよ、元々そういうつもりで話をしたわけじゃないから」 「そうなんですか?俺はてっきり、手間が省けるから、俺を同行させたのかと」 「手間?」 辻の方を見ると、複雑そうな顔で空になったカップを眺めている。 「俺と終わらせる手間、ですよ」 「それはない。絶対ない」 即座に否定して、今度は俺の方から辻の手を握る。 「怜音さん?」 「……待たせてごめん。ようやく、けりが着いたから、言えるよ」 そして、一呼吸置いた後、真っ直ぐ辻の瞳を見つめて言う。 「朔弥、俺はお前が好きだ。俺と正式に付き合ってください」 告げた途端、満面の笑みが返ってきて、その笑顔に見惚れていると、素早く口づけられた。 「もちろん、 OK ですよ」 「ちょ、ここ喫茶店だから」 「じゃあ、俺の部屋に来ませんか?」 あの日を思い出して、笑いながら了承した。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!