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3 急告
それから三日が過ぎた。
遥が殺された事件は、翌日すぐに報道された。
さすがにあの遺体の凄惨な状況が詳細に語られることはなかったが、夜の公園で女子高生が殺されるという異様性もあり、テレビのニュースでは私の高校や規制線の張られた公園の様子が事細かに映し出されていた。
『何故被害者となった坂木遥さんは一人で夜の公園のベンチに居たのか、その足取りを含め、警察では交友関係や周辺の不審者情報の捜査を……』
悲壮感を煽るような面持ちでレポーターが告げるテレビを、幹二さんが消す。
向かいのソファーに座ってその様子を見ていた七緒さんが、静かに告げる。
「でも、警察が来る前に冥奈さんの自転車を回収できたのは、幸いだったと思います」
「もしかすると、冥奈が疑われていたと?」
台所からコーヒーを運んできた幹二さんが、カップをテーブルに置きながら訊ねる。
「状況的には、そうなっていたかもしれません」
「……」
不服そうな表情を浮かべて、幹二さんが私の隣に座る。
「そんなこと。冥奈は罠に掛けられたんですよ」
「警察が調べているのは状況証拠です。そもそもフタクチという化け物の存在が立証できない以上、私たちの言うことに信憑性が無いと思われても仕方ありません」
「ですが……」
「万一、私の祖父の件にまで捜査が及んでくると、厄介なことになるかもしれません。とにかく今は、あまり表立った行動をとらないようにしながら身を守っていくしか方法はありません」
「……」
手を組んだまま、幹二さんは押し黙る。
あの夜、家に戻った幹二さんは私が居ないことに気付き、すぐにスマホのGPSで私の行方を追った。
そして城石公園で、遥の死体の前で悲鳴をあげる私を見つけたのだ。
「この家の周辺には端境を張っています。特に冥奈さんの部屋には念入りに」
カップから立ち上る白い湯気を見つめたまま、七緒さんが言う。
七緒さんが私たちの家を訪れたのは、その翌日だった。話を聞くた七緒さんはすぐに家中にお神酒と榊を祀り、赤い護符文字の書かれた御札を全ての出入口に貼り付けた。
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