3 急告

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 時計の針だけが音もなく進んでいく中、七緒さんが沈黙を破る。 「ひとつだけ……気になっていることがあるのですが」 「気になったこと?」  訊ね返す幹二さんに視線を向け、七緒さんは長い髪を耳に掛ける。 「冥奈さんの友人……遥さんが呼び出されたというメモのことです。彼女を呼び出したメモに冥奈さんの名前があるのであれば、すぐに警察から連絡がくるはずです。参考人として」 「それは……」 「ですが警察からは、これまで何の連絡もありません。おそらくメモの存在自体を知らないのだと思います」 「そういえば彼女の持っていたスマホも無くなっていたと、ニュースで言っていたが……」  そこまで言って、幹二さんは口籠る。  七緒さんの言いたいことは分かった。  あの夜、遥が最後に連絡をとったのはおそらく私だ。スマホの通話履歴には私の名前が残っているはずだ。 「じゃあ……」 「そう。あの晩、何者かに化けたフタクチは遥さんに接近し、メモの所在を確認してから彼女を殺したのでしょう。そしてメモとスマホを持ち去った」 「そんなこと……」  七緒さんの意図が分かったのだろう。幹二さんは言葉を失う。  そう。七緒さんはフタクチが遥の顔見知り……すなわち私のクラスメイトに姿を変えているのだと推測しているに違いない。  すっかり冷めてしまったコーヒーの波紋を見つめたまま、私は口を開く。 「そのことで……学校で遥に聞いたんですが」
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