弁当男子

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若田ひとみ、二十歳。 面接にやって来た時、背の小さい女、という印象だった。 人事部なんて物はうちの会社には無いので、社長と俺の二人で面接試験も行った。 俺は185センチとノッポな方なので、大抵の女は小さいのだが、彼女はそれにもまして小さかった。 後で健康診断の紙を見ると、150センチとあり、俺より35センチも小さいのか?!と、愕然としたものだ。 ちなみに、体型はポッチャリだ。 本人の為に、健康診断書に書かれた体重欄の数字は忘れる事にしたが。 「課長~!美味しいです!!」 涙を流さんばかりに、たった一本のササミに感激している。 まともな食事、してないんだろうな、こいつ。 「ダイエットも良いけど、キチンと食わんと体壊すぞ。 幸い、明日は初給料だ。 まともな食事すれよ。」 「あー、そうですね。 分かってるんですけど、料理も苦手で。」 「一人暮らし、初めてなのか?」 「はい。短大は、親元から通えたんですよ。 私、こんなに料理って面倒なのかって、初めて知りましたよ。」 「まあ、面倒かも知れないが、意外と面白いぞ?」 「面白いですか? じや、今食べたササミ、どうやって作るのか教えて下さい!」 「どうって、鶏のササミに卵の黄身を混ぜたネギ味噌を塗ってフライパンで焼いただけだけど。」 「師匠と呼んで良いですか~?!」 瞳をキラキラさせた若田ひとみ二十歳がいた。(瞳とひとみで、駄洒落か?)
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