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矢上樹、32歳。
俺の勤める会社の社長の息子だ。
そして、俺が以前勤めてた会社の同期であり、ライバルだった奴。
以前勤めてた会社はかなり大きく、業界でも有名な会社だった。
俺はがむしゃらに働き、頭角を現していた。
誰もが注目する、仕事の出来る男。
しかし、体の酷使がたたり、入院を余儀無くされたのだ。
不眠不休は当たり前、食事もろくにとらず働いていたのだから、自業自得だ。
会社を辞め、病気も治り、仕事を探さなければとなった時に、前の会社で同期だったコイツが連絡してきた。
『親父の会社を助けてくれ!』
仕事を探す手間は省けたが、助けてくれ、とはなんぞや?となった。
要約すれば、昔から働いてくれていた重鎮の面々が、病気やら、家庭の事情やらで辞めたり休んだりで、人手が足りなくなった為だった。
別に会社がブラックだった訳ではなく、単なる高齢化の弊害だったのは会社の名誉の為にもはっきりさせておいたが。
おまけに当の社長までギックリ腰と過労で入院してしまったという有り様で。
『いやぁ、加藤がいてくれて、本当、助かった。
お前が経理畑だって思い出して口説き落とした俺、ナイスだわ!!』
そんな大役、無理だと渋る俺をこの会社に就職させたのだ。
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