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声の印象そのままの真っ直ぐな姿勢だが、その服装はデニムのパンツにTシャツとかなりラフな服装だ。誠司は男性にしては小柄な体格ではあるが、それにしても頭一つ分ほどの身長差があるということは、明らかに相手が長身だ。ハキハキとした挨拶と共に見せた笑顔は夏の太陽のように明るい。引き締まった顔立ちと意志の強さを示すくっきりとした眉は、一見厳しい印象も受けそうだが表情が柔らかいため、硬さを感じない。
この人がハウスキーピング? それとも、ただの仲介かな。
きっと後者だろう、と予想して誠司は顔を上げた。葛西と名乗った男は、その人あたりのいい笑顔のまま、至極真面目に聞いた。
「三國誠司さんはご在宅でしょうか?」
「え?」
予想外の問いかけに思わず目を見開く。
「すいません。三國誠司は、俺ですが」
「え?! あなたが三國誠司さんなんですか?」
ゆっくりと告げたはずなのに、嘘だろと言わんばかりに葛西は声を上げた。
「あなたが三國誠司さんですか? ミステリー作家の三國誠司で間違いないんですか?」
「……そうですけど」
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