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「……それで、ハウスキーパーの方は?」  これ以上無駄話をする気はないと言う意思を込めて、葛西の後ろに誰か居ないのかと視線を動かす。だが、葛西以外の人影はない。  誠司がなにを言おうとしているのか察した葛西は、またさわやかな笑顔を見せた。 「改めまして。三國さんのハウスキーパーを担当させていただくことになりました、葛西弘明です。本日より、どうぞよろしくお願いします」 「あなたが……?」 「はい」  驚かれることに慣れているのか、誠司の不審がるような目を気にする様子も見せず、葛西は堂々としている。 「……それは、失礼しました。どうぞ」 「失礼します」  長々と立ち話をしてしまった事に気づき、できるだけ平静に葛西を家の中に案内する。よくよく見ると、葛西は大きなスーツケースを持っており、彼が間違いなく誠司の依頼で派遣されてきた住み込みのハウスキーパーだと認めた。  リビングのソファーに案内し、葛西が座ってから誠司も向かい側のソファーに座る。  飲み物でも用意するべきかと思ったが、今までのハウスキーパーにもそのような事をしたことはなかったと思い出し、やめた。  どうせ長話するつもりもない。  誠司が座ると、ついて歩いていたケイトもその隣に座りパタリとしっぽを揺らす。その背中を撫でていると、葛西が先に口を開いた。 「随分と綺麗に片付いてますね」  家の中を見渡しながら呟いた葛西が呟いた。元々、書斎以外の部屋はほとんど使っていないので、散らかることもほぼない。 「あなたにお願いしたいのは猫の世話です」 「猫? なるほど」  葛西は頷いた。  誠司側から見ても、三匹の猫が視界に入っている。当然、葛西の視界にも入っているはずだ。 「ずいぶんたくさんいますね。何匹飼っているんですか?」 「十匹居ます」 「十匹も居るんですか。多いですね」  もう一度家の中を見渡しながら、一番近くに居た猫においでと手招きしている。突然現れた部外者に急に寄っていくほど猫の警戒心は弱くはない。どの猫も遠巻きに葛西を見ている。だが、身近な猫を呼ぼうとする仕草に葛西は猫嫌いではないと知る。とりあえず、誠司がハウスキーパーに求める最低条件は満たしているようだ。  誠司はテーブルの上に置いていたノートを差し出した。
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