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「このノートに、猫達の事と家の事が書いてあります。必要なことはこれを読んで確認してください。基本的に、猫の世話とノートに書いてあること以外はなにもしなくていいです。二階にあなたの部屋を用意してますから、好きに使ってください。それから、俺の書斎には入らないでください」  今までのハウスキーパーに伝えてきた内容と、まったく同じ言葉を淀みなく伝える。 「え、ちょっと待ってください。それだけですか?」 「はい。なにか不満が?」 「いえ……」  住み込みで雇うぐらいなので、もっと多くの仕事を押し付けられると思っていたのか、なにもしなくていいという言葉が気にかかったようだ。だが、元々雇用条件にもメインは猫の世話だと明記したはずだ。驚かれるのは心外だ。 「猫にまだ昼御飯をやっていませんので、まずはエサの用意からお願いします」 「エサ? それはどこに」 「ノートに書いていますので、確認してください。それでは、よろしくお願いします」  話は終わりだと、ケイトを抱き上げ書斎へと向かう。その背中に「待ってください」と声がかけられた。 「なにか」 「……いえ。その子のエサはいいんですか?」  その子、と指を指されたケイトに視線を落とす。くあっと尖った歯を見せてあくびをするケイトに小さく笑いかけそうになり、葛西が居ることを思い出し表情を引き締めた。 「ケイトは俺からしかエサを食べません。それも、ノートに書いてあります」  そう言い残し、誠司は書斎へ入った。「はあ……」戸惑いを多く含んだ声が聞こえたが、無視をした。
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