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男は辺りを見回しコンビニを見つけ走って行った。走る後ろ姿は背が高くてスタイルのいい男性だった。歳は…30代半ばといった感じがした。少しすると常温の水を買って来てくれた男が走って戻ってきた。
「ごめん…これでいいかな?ええっと…コレは1回2錠で…こっちは1錠?ーーーそう、小さくでも良いから口開けれる?水飲める?ーーーゆっくり一口ずつ…」
薬袋に書かれている通りフィルムを押し薬を出していく。ピルケースに入っている錠剤の用量を聞いてくれたのでそのまま頷く。合計3錠の薬と水がゆっくりと口の中に入り喉を通っていく。
コクンと喉が上下したのを見ると男がホッとした表情を見せた。髪を後ろに撫で付けた感じでモデルみたいに彫りが深くはっきりとした顔つきの男だった。歳は、さっきの背格好から見てもやっぱり30半ばだと思った。
「良かったーーーこれで少しは楽かな?…あっ!会社はどこ?この近く?連絡してる?」
会社の事を思い出し込み上げてくる吐き気を抑えながら俺は首を振った。
「その様子だと話せてないよね…。スマホ借りていい?」
男は俺の足元に落ちたままになっているスマホを手に取った。ホームボタンを押すと【着信あり10件(株)VAコーポレーション 大石部長】と表示が出ていた。
「これ…君の会社?電話してもいいかな…?」
頷きかけたその時にバイブレーションの振動と共に俺のスマホが着信を知らせた。ディスプレイは…大石部長からだった。男は俺の方を見て『出るね』と小さく言って通話ボタンをタップした。
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