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「それは無理です。彼は今動ける状態ではありません。今から病院に連れて行きます」
電話をしながら男は俺の背中を摩ってくれていた。少しずつ気持ち悪さが取れていく。
『どうせサボりなんでしょ?そこまで言うなら業務が終わったらちゃんとこちらから病院に連れて行きますから。先ずは代永に代わってもらえませんか?いい加減にしないと、こちらも出るところ出ますよ』
「それはこちらもです。聞いている感じですと給与を制裁として引いていますよね?これはれっきとした労働基準法違反です。貴方の彼に対する口ぶりも立派なパワハラにあたる。労働基準監督署にこの電話の内容通報します」
『それはっ!……』
電話から大石部長の声が聞こえなくなった。男はそのまま話し続けた。
「とにかく、彼を病院に連れて行きます。それが最優先です。では」
そう言って男は電話を切ってしまった。『大丈夫?』と声をかけてくれる男に何とか声を出そうとする。
「…あ、の…もう、大丈夫、です……」
胃酸が出るまで吐いてしまっていて、喉が焼けて声が出づらい。これ以上の言葉はなかなか出せなかった。
「取り敢えず今から病院に向かうよ。安心して休んでいい…」
男は直ぐに何処かに自分のスマホで電話をする。暫くしてやってきたタクシーに乗せられて俺たちは病院に向かった。
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