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「安心して。会社に戻れと言いに来た訳じゃないから」
「じゃあ、どうして…?」
「君が勤めているVAコーポレーションだけど、重大な労働基準法違反やパワハラを繰り返しているみたいで、その事で君の勤務実態など詳しく聞きたくてね。君の事は決して口外しないし、君の不利益になる事は一切しない。だから、話して貰えないかな?」
「でも……」
はっきり言って、いきなり『弁護士だ』と言われても信用できない。もし、話した事を会社にバラされてこれ以上居づらくなるのは嫌だ。そんな事になったらもっと辛い仕事が待っている。
なら、今行けば、今、会社に行けば…まだ1日休んだだけだから何とかなるかもしれない。もう1日も休んだんだ…そう、行ける。行ける筈…。今行かないと…
「じゃ、今から、仕事、行、きます…なら問題、無い、ですよね」
「ちょっと待って!そういう意味じゃ…!」
『行かなきゃ』と起き上がろうとしたが、強烈な頭痛を吐き気が襲って来た。頭を抱えてベッドの中で蹲る、のたうち回る程痛い。脳が、身体が全身で起きる事を拒否している。
「代永君!!」
垣岡さんがナースコールを押したのか、バタバタとした音と共に看護師が来るのが分かった。腕を出され注射を打たれる。多分、鎮静剤と鎮痛剤だ…。
「代永さん。大丈夫ですよ…。ゆっくり呼吸して…。そう…」
無意識にサイドテーブルに置いてあるペットボトルに手を伸ばす。看護師がそれに気付いて俺の手にペットボトルを渡してくれた。
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