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そのペットボトルを持っているだけで、あの男性の事を思い出し心が落ち着いてくる気がした。そうだ…ちゃんとお礼言わなきゃ…ちゃんと会ってお礼が言いたい…もう一度会いたい…
そう思うと身体がほんの少しだけ楽になった気がした。俺はまだ襲う痛みと吐き気に耐えながらペットボトルを強く握りしめた。
その様子を見て看護師が垣岡さんを見てキツめの口調で言った。
「代永さんに何話したんですか!まだ昨日入院したばかりで体調万全ではないんですよ!」
「すみません…」
垣岡さんが看護師さんに謝っているのを見て、何だか俺が悪いことをしてしまった気分になった。俺が急にこんな事にならなければ怒られずに済んだのに…
しばらくすると頭痛はするが、のたうち回る程ではなくなってきた。鎮痛剤が効いてきたのだろう。
少し落ち着いた様子をみた看護師が『また何かあったら呼んで下さいね』と病室を後にした。
ペットボトルを握りしめたまま、垣岡さんの方を向く。俺は垣岡さんに職場の話をする事を断ることにした。
「すみません…こんな調子なんです…だから、その、会社の事、お話出来る状態じゃないんです…すみません…」
「こちらこそすみません。まさかここまでとは知らず…いきなり知らない人が押し掛けて会社の話をしろなんて不躾な事を言って。でも、君が会社で受けているパワハラや苦痛から助けたい気持ちは間違い無いので、それだけは分かって下さい」
「わかり、ました…」
俺は俯いてそう答えるしかなかった。
どうして、いきなり来て見ず知らずの俺にこんな事言うのか全く理解できなかった。
それに、どうして俺がVAコーポレーションの社員で、倒れた事も、病室も、名前も、職場で労働基準法の違反やパワハラがあった事も何で知っているのか?
解らない事ばかりで頭が混乱する。頭痛ではなくて今度は眩暈がしそうだ…
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