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「探偵……」
蒼威さんの言葉を聞いて身体がビクッと跳ねた。
『探偵』ってまさか…俺を調べてた人?
まだ、俺を調べているんだろうか…?
「なかなか来れなくてゴメンね…意識が戻ったみたいで良かった。ハイ、これ」
壮年の男性がビニール袋を俺の膝の上にバサッと置いた。若い男の方はペコっと言葉を出さず頭を少しだけ下げた。
中をそっと開くと大量の缶コーヒーとジュースだった。
「あ、あの…これは?」
「あれ?見舞いにコーヒーあると嬉しくない?」
「それは所長だけです。ジュースの方が良いに決まってるでしょ?ねぇ」
いや、そういう意味じゃなく……
初対面の人が目の前で言い合いされても困る。
俺はチラッと蒼威さんの方に目配せした。俺の視線に気付いてくれた蒼威さんが2人に声をかけてくれた。
「あのさ、2人共代永さんに用事あったんじゃないの?」
「あっ、そうだった」
そう言って壮年の男性と若者が俺の前に整列する。
「ちゃんとこうやって面と向かうのは初めてになるのかな?初めまして。俺は綾瀬探偵事務所の所長の綾瀬 塔矢、こっちの若いのが助手の佐々木 亜夢。今回、ちょっと君に話さなきゃいけない事があってね。ほら、佐々木君」
佐々木と言われた若い男の方は、さっき『コーヒーだ』『ジュースだ』という言い合いをしていた時とは全く違って、すっかり大人しくなっている。
まるで、借りて来た猫だ……
俺のベッドの横に真っ直ぐ立ち次の瞬間、腰を思いっきり曲げて大きい声を発した。
「この度は…すみませんでした!!!!」
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