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駅の改札を抜け、会社に向かって歩く。さっき飲んだ吐き気止めと頭痛薬なんかもうこの時点で効いていない。動悸・吐き気・頭痛が止まらない。少し休みながら重くなった足を動かす。普通に歩いて10分程の距離でも30分以上かかる時がある。なので余裕持って来ているつもりでもいつもギリギリになってしまう。
「…お早うございます…」
殆ど返事のない挨拶に溜息をつく。デスクに荷物を置いてパソコンの電源を入れる。パソコンの電源は俺を縛る鎖へと変化して俺に見えない首輪と鎖を付けた。
「おい!代永!さっさと仕事しろよ!ホントお前は愛想悪いし作業はトロいし…終わるまで帰るんじゃねーぞ」
大石部長の言葉に身体が反応してビクつく。キーボードを叩く指が震える。俺としては必死に仕事をしているのだが、膨大過ぎる仕事の量に処理が追いつかない。今日も見えない鎖と会社という牢獄が俺を捕らえて閉じ込めた。
新卒でこの会社に入り2年が経った。海外も含め色んな所から雑貨や衣料を輸入、更に自社開発で商品を作り色んな所へ卸したり直営ショップで販売している中規模の会社だった。
最初は営業とか商品開発とかの仕事に憧れて此処へ入った。「君みたいな人材がこの会社には必要だから是非来て欲しい」なんて社長から直々に言われたから他の仕事の内定も出ていたのに、その内定を蹴ってまで此処へ入った。
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